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2026 2.26

ウレタンゴムとは?特性・用途・加工方法から 素材選定のポイントまで徹底解説

工業用部品に使われるゴム素材のなかでも、ウレタンゴムは耐摩耗性や機械的強度に突出した性能を持つ素材です。ローラーやパッキン、キャスターなど幅広い製品に採用されており、金属やプラスチックでは対応しにくい用途でも力を発揮します。

一方で、耐水性や耐熱性に課題があるため、使用環境に合った正しい選定が欠かせません。この記事では、ウレタンゴムの基本的な特性から、他素材との違い、加工方法の選び方、そして部品調達時に押さえておきたい実務的なポイントまでを網羅的に解説します。

ウレタンゴムとは|基本的な定義と化学的な特徴

ウレタンゴムの定義と成り立ち

ウレタンゴムとは、ポリオール(ポリエステルまたはポリエーテル)とジイソシアナートの重付加反応によって生成される高分子化合物のうち、ゴム状の弾性を持つものの総称です。正式にはゴムではなく「ゴムのような弾力を持つプラスチック」に分類されますが、JIS規格では合成ゴムの一種(記号:U)として扱われています。

最大の特徴は、合成ゴムの柔らかさ(弾性)とプラスチックの硬さ(剛性)を兼ね備えている点です。一般的なゴムでは補強剤を添加しなければ十分な強度を得られませんが、ウレタンゴムは補強剤なしでも優れた強度と弾性を発揮できます。

ポリエステル系とポリエーテル系の違い

ウレタンゴムは、原料ポリオールの種類によって大きく2タイプに分かれます。それぞれ得意とする性能が異なるため、使用環境に応じた使い分けが重要です。

比較項目

ポリエステル系(AU)

ポリエーテル系(EU)

耐摩耗性

非常に優れる

優れる

耐油性

優れる

やや劣る

耐加水分解性

劣る(-COO-構造が水と反応)

優れる(-O-構造で安定)

耐寒性

やや劣る

優れる

機械的強度

非常に高い

高い

 

水分と接触しうる環境ではポリエーテル系を、耐油性や耐摩耗性を最優先する場合はポリエステル系を選ぶのが基本です。

ウレタンゴムとウレタンフォームの違い

混同されやすいウレタンフォーム(発泡ウレタン)は、原料に発泡剤を加えてスポンジ状に加工したものです。クッション材や断熱材に使用されるウレタンフォームと、弾性体として工業部品に使われるウレタンゴムでは、物性も用途も大きく異なります。部品調達時に「ウレタン」とだけ記載されている場合は注意が必要です。

ウレタンゴムの特性|メリットとデメリットを整理

ウレタンゴムのメリット(優れた特性)

合成ゴムのなかで最高クラスの耐摩耗性

ウレタンゴムの最大の強みが耐摩耗性です。繰り返しの摩擦にさらされる搬送ローラーやキャスター、ベルトコンベア部品に使われるのはこの特性のためです。一般的な合成ゴムと同条件で比較した場合、数倍の摩耗寿命が期待できるとされています。

優れた機械的強度(引張強度・引裂強度)

引張強度は200〜450kgf/cm²、引裂強度は20〜45MPaと、NBR(ニトリルゴム)やCR(クロロプレンゴム)を上回ります。強い衝撃や荷重を受ける部品にも適しており、金属部品の代替候補として検討されることもあります。

高い弾性と広い硬度範囲

ショアA硬度で10〜100、ショアD硬度で40〜75と、非常に広い範囲で硬さを調整できます。柔軟な緩衝材から硬質のギアまで一つの素材で対応でき、設計の自由度が高い点が魅力です。

NBRに匹敵する耐油性

油に対する耐性が高く、とくにポリエステル系ウレタンゴムは工作機械や油圧機器の周辺部品に好適です。ガソリンや軽油に対しても安定した性能を示します。

比重が軽く加工しやすい

比重は1.0〜1.3と、クロロプレンゴム(1.3〜1.6)などと比べて軽量です。注型加工や射出成形、切削加工など多彩な加工方法に対応でき、複雑な形状の部品も製作しやすい素材です。

ウレタンゴムのデメリット(注意すべき特性)

耐水性の低さ|加水分解のリスク

ウレタンゴム最大の弱点が耐水性の低さです。とくにポリエステル系では、分子内の-COO-結合が水(H₂O)と反応し、酸とアルコールに分解される「加水分解」が起こります。湿度の高い環境や水と直接接触する用途では、ポリエーテル系への変更や防水処理が不可欠です。

耐熱性の限界(約80℃が目安)

一般的なウレタンゴムの最高使用温度は80℃程度です。100℃を超える環境では、シリコーンゴムやフッ素ゴムなど耐熱性に優れた素材への変更が必要になります。

耐寒性の制約

脆化温度は-30〜-60℃で、ポリエーテル系のほうが低温側に強い傾向があります。極低温で使用する場合はシリコーンゴムが候補になります。

 

メリット

デメリット

耐摩耗性が合成ゴム中トップクラス

耐水性に劣る(エステル系の加水分解)

引張強度・引裂強度が非常に高い

耐熱温度は約80℃が上限

硬度範囲が広く設計自由度が高い

耐寒性が他の合成ゴムに比べ低い

耐油性に優れる

紫外線に弱く変色しやすい

軽量で多彩な加工方法に対応

高温・高湿環境での劣化リスク

 

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ウレタンゴムの主な用途

ウレタンゴムはその特性を活かし、さまざまな分野の部品に採用されています。代表的な用途を分野別に整理します。

工業・産業機器分野

最も採用が多いのが工業分野です。ベルトコンベアのベルト・ローラー、パッキン・ガスケット、カップリング、スクレーパー、ダイスなど、摩耗や高荷重に耐える必要がある部品で広く使われています。紙送りローラーや搬送ローラーはウレタンゴムの代表的な採用例です。半導体製造装置向けの精密部品にも採用されるなど、高い寸法安定性を求められる場面でも選ばれています。

自動車・搬送機器分野

フォークリフトのソリッドタイヤ、キャスタータイヤ、防振材・緩衝材など、耐荷重性と耐摩耗性を両立する必要がある分野で活躍します。パッキンやオイルシールなど油圧系の部品にも使われ、長寿命化に寄与しています。

建築・日用品分野

建築では防振材や断熱補助材として利用されます。日用品ではスキーブーツの衝撃吸収材やスポーツ用品のパーツとしても使われ、私たちの身近なところにもウレタンゴム製品は存在しています。また、電線・ケーブルの被覆やチューブ材料としての用途もあります。

ウレタンゴムの加工方法と選び方

ウレタンゴムは加工方法が豊富な素材です。形状・数量・コストに合った方法を選ぶことで、品質とコストのバランスを最適化できます。

注型(キャスタブル)加工

液状のウレタンゴム原料を金型に流し込み、加熱・硬化させる方法です。ウレタンゴムの物性を最大限に引き出せるとされ、最も広く採用されている加工法です。金型費が比較的安く、複雑な形状にも対応可能ですが、大量生産には向いていません。

射出成形(インジェクション)

ペレット状のウレタンゴムを加熱溶融し、高圧で金型に注入して成形する方法です。大量生産時の単価を抑えられますが、金型・設備の初期投資が大きいため、一定数量以上の量産が前提です。

プレス成形

ミラブルタイプのウレタンゴム生地を金型にセットし、加熱・加圧して成形します。射出成形ほどの量産性はないものの金型費を抑えられ、中ロットの生産に適しています。

切削加工

丸棒や板材からの削り出しで成形する方法です。金型が不要なため、試作品や1個からの極小ロットに最適です。形状の自由度は高いものの、量産にはコスト面で不利です。

関連記事:ゴム切削加工とは?金型不要で高精度な小ロット試作を実現する方法

ライニング加工

金属部品の表面にウレタンゴムを焼き付ける加工法です。工業用ローラーやキャスターの製造に使われ、金属の剛性とウレタンゴムの弾性・耐摩耗性を組み合わせられます。

ロット数・形状で選ぶ加工方法の目安

加工方法

適したロット

金型費

形状の自由度

注型加工

小〜中ロット

比較的安価

高い

射出成形

大ロット向き

高額

高い

プレス成形

中ロット向き

中程度

やや制約あり

切削加工

1個〜小ロット

不要

非常に高い

ライニング

小〜中ロット

中程度

用途限定

 

試作段階では切削加工で形状を確認し、量産移行時に金型成形へ切り替える流れが一般的です。この「試作から金型、そして量産」というステップを一社で完結できるサプライヤーであれば、品質の安定とリードタイム短縮が期待できます。

関連記事:ゴム加工とは?—加工方法・素材・メリットから価格まで徹底解説

ウレタンゴムと他のゴム素材を比較

ウレタンゴムの採用を検討する際には、他のゴム素材との特性比較が欠かせません。代表的な5素材で主な性能を比較します。

特性

ウレタン

NBR

シリコーン

EPDM

フッ素

耐摩耗性

機械的強度

耐油性

×

耐熱性

耐水性

耐候性

コスト

やや高

 

NBR(ニトリルゴム)との比較

NBRは汎用的な耐油ゴムとしてコストパフォーマンスに優れます。ただし耐摩耗性や引裂強度ではウレタンゴムに及ばないため、摩耗が激しい環境ではウレタンゴムが有利です。水回りではNBRのほうが安定しています。

関連記事:NBR(ニトリルゴム)とは?|用途・特徴について解説

シリコーンゴム(VMQ)との比較

シリコーンゴムは-60℃〜200℃超という広い温度範囲で物性を維持できますが、機械的強度や耐摩耗性はウレタンゴムに劣ります。高温環境や医療・食品分野ではシリコーンゴム、摩耗や衝撃を受ける環境ではウレタンゴムという使い分けが基本です。

関連記事:シリコンゴムとは?特性・用途から他素材との違い・加工方法まで徹底解説

EPDM(エチレンプロピレンゴム)との比較

EPDMは耐候性・耐オゾン性・耐水性に優れ、屋外や水回りの部品に適しています。一方、耐摩耗性と機械的強度ではウレタンゴムが上回ります。使用環境が屋外・水回りならEPDM、屋内の摩耗・荷重環境ならウレタンゴムが第一候補です。

関連記事:EPDMゴムの基礎知識|用途と他素材との比較

フッ素ゴム(FKM)との比較

フッ素ゴムは耐熱性・耐薬品性がきわめて高い反面、高価格がネックです。ウレタンゴムで対応可能な範囲であればコスト面で大きなメリットがあります。高温・薬品環境のみフッ素ゴム、それ以外はウレタンゴムという使い分けも実務上よく見られます。

用途別おすすめ素材の選定ガイド

使用環境・要求性能

推奨素材

摩耗が激しい(ローラー、コンベア部品)

ウレタンゴム(U)

油と接触する(油圧機器シール)

NBR または ウレタンゴム

屋外・水回り(配管パッキン等)

EPDM

高温環境(100℃超)

シリコーンゴム または フッ素ゴム

衝撃吸収・防振(キャスター、緩衝材)

ウレタンゴム(U)

耐薬品性が必要(化学プラント)

フッ素ゴム(FKM)

ウレタンゴムの劣化を防ぐポイント

優れた物性を持つウレタンゴムも、使用環境を誤ると寿命が大幅に短くなります。長く安定して使うためには、とくに加水分解と熱劣化への対策が重要です。

加水分解を抑えるための対策

加水分解はポリエステル系ウレタンゴム最大のリスクです。防止策の基本は、水分と接触する環境ではポリエーテル系を選定することです。やむを得ずポリエステル系を使う場合は、防水コーティングや設置箇所の湿度管理など、使用環境側で水分を排除する工夫が求められます。

近年は耐加水分解性を高めた特殊グレードや、ポリカーボネート系のウレタンゴムも開発されています。長期間水分にさらされる可能性がある場合は、メーカーへ環境条件を伝えたうえで最適な材質を相談することをおすすめします。

保管・使用環境の管理

保管時は直射日光を避け、湿度の低い場所で管理しましょう。紫外線による変色や物性低下を防ぐため、遮光性のある包装での保管が推奨されます。使用時は80℃を超えない環境であることを確認し、温度変化が大きいラインでは定期点検・交換サイクルを設けることがトラブル予防につながります。

ウレタンゴム部品の調達で押さえておきたいポイント

ウレタンゴム部品を外注するにあたっては、素材知識に加えて図面の準備や発注フローの理解も大切です。スムーズな取引のために以下のポイントを押さえておきましょう。

見積り依頼時に図面へ記載すべき情報

ウレタンゴム部品の見積りをスムーズに進めるためには、次の情報を図面に盛り込んでおくことが望ましいです。

 ・部品の外形寸法と公差

 ・素材タイプの指定(ポリエステル系 / ポリエーテル系)

 ・硬度の指定(ショアA / ショアD)

 ・使用環境(温度、湿度、接触する液体・薬品の種類)

 ・求められる規格対応(RoHS2、REACH等)

 ・数量(試作数 / 量産数)

図面がしっかり整っていれば、加工業者からの回答スピードは格段に上がります。なかには図面があれば即日で概算見積りを返せる業者もあるため、情報の充実度が調達効率に直結します。

試作から量産までの流れを見据えたサプライヤー選び

ウレタンゴム部品の開発は「切削加工による試作 → 金型製作 → 金型成形による量産」というステップが一般的です。試作と量産を別の業者に分けると、情報伝達のロスや品質のばらつきが発生しやすくなります。

試作から量産まで一貫して対応できるサプライヤーを選ぶことで、品質の安定とリードタイム短縮が期待できます。さらに、ゴムだけでなく樹脂部品もまとめて発注できる業者であれば、複合素材の部品調達先を一本化でき、管理コストの削減にもつながります。

まとめ

ウレタンゴムは、合成ゴムのなかでも耐摩耗性と機械的強度にとくに優れた素材です。ポリエステル系とポリエーテル系それぞれの特性を正しく理解し、使用環境に合った種類を選ぶことが、部品の性能と寿命を最大化する第一歩になります。

加工方法はロットサイズや形状に応じて最適な手法が異なります。試作段階から量産を見据えた業者選びを行い、「切削で試作 → 金型で量産」という流れを一社で完結できるパートナーを選定することが、品質面・コスト面の両方で有利に働きます。

また、ウレタンゴムの弱点である加水分解や耐熱性を正しく理解しておけば、不要なトラブルを未然に防ぐことができます。素材選定や加工方法にお悩みの際は、ゴムと樹脂の両方を取り扱う専門メーカーにご相談いただくことで、最適なご提案が可能です。

 

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