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2025 6.18

ゴム加工とは?—加工方法・素材・メリットから価格まで徹底解説

ゴム加工とは?—加工方法・素材・メリットから価格まで徹底解説

設計者・購買担当者必見のゴム加工総合ガイドで、加工方法の種類、素材選定のポイント、メリット・デメリットからコスト目安、業者の選び方まで網羅し、専門的かつ実用的な情報で基礎から応用までカバーしています。設計者・購買担当者の実務に役立つ知識を提供し、包括的で信頼できる内容です。

 

ゴム加工とは〜基本概要

ゴム加工とは、その名の通りゴム材料を使って目的の性質や形状を持つ製品を作ることです。一般に、ゴム製品の形状を作る方法としては金型を用いた成形加工(モールド成形)や、素材を削る切削加工が主に利用されます。ゴムは柔軟で弾性を持つ特性上、金属やプラスチックとは異なる加工上のポイントがあります。この記事では、ゴム加工の方法や素材の種類、活用分野、工程、メリット・デメリット、さらには費用や事例、依頼先の選び方まで網羅的に解説していきます。ゴム加工について抱える疑問や課題に答えられる内容となっています。

 

ゴム加工の用途・活用分野

「ゴム」と聞くとタイヤをはじめ、防振ゴム製品、シーリング(パッキン)、ゴムホースなど様々な製品が思い浮かぶでしょう。実際、ゴム加工品は私たちの日常生活から産業分野まで広く活用されています。例えば、自動車産業ではワイパーのゴム、オイルシール(パッキン)、各種ホースなど多彩なゴム部品が使われています。建設分野では建物の免震ゴム、土木用シール材などが代表的です。電機・電子分野でも絶縁や防振目的でゴム部品(コードグロメットや耐震パッド等)が利用されています。さらに医療・食品分野では、シリコンゴム製のチューブやパッキン、ゴム手袋など、安全性・清潔性に優れたゴム加工品が活躍します。このようにゴム加工によって作られる製品の用途は非常に幅広く、私たちの暮らしと産業を支えています。

 

ゴム加工の主な方法

ゴム製品を形作る加工法には多くの種類がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。それぞれ製品の形状や数量、要求精度に応じて最適な加工法を選ぶことが重要です。

金型成形加工(モールド成形)

金型成形は、ゴム材料を金型(モールド)に入れて加熱・加圧し、所定の形状に固める加工方法です。プレス機で上下の金型にゴムを挟んで加硫(硬化)させるプレス成形や、金型にゴムを射出する射出成形(インジェクション成形)、金型に押し込むトランスファー成形、連続的に押し出す押出成形などの種類があります。金型を製作する初期費用はかかりますが、その分大量生産に適しており、一度に複雑な形状をまとめて成形できるメリットがあります。また金型を用いることで寸法の再現性や安定した品質を確保しやすく、高い寸法精度が要求される製品にも向いています。代表的な例として、ゴム製のOリングや複雑形状の防振ゴム部品などは金型成形で大量生産されます。ただし金型製作にコストと時間が必要になる点がデメリットで、試作品作成や少量生産には不向きです

切削加工(機械加工)

ゴムの切削加工とは、ゴム素材(板材や成形ブロックなど)を刃物や工具で削ったり切断したりして形を整える加工方法です。旋盤(ろくろ)でゴムを回転させながら削る方法や、フライス盤・ウォータージェット、プロッターカッターによる切り出しなど、さまざまな手法があります金型を必要としないため初期費用を抑えられ、小ロットからでも対応しやすいのが大きなメリットです。設計変更や試作を繰り返す場合や、1個だけ作りたい場合には切削加工が適しています。また、金型成形では作りにくい細かな調整や複雑な形状にも、加工方法を工夫することで対応できる場合があります。一方で大量生産には向かず、1個あたりの加工コストは割高になりがちです。さらにゴムは柔らかく弾性があるため切削時に刃物を逃れようと動き、寸法精度を高く出すことが難しいという課題もあります。したがって、切削加工品では±0.5mm程度の誤差は許容する必要があるケースもあります。総じて切削加工は、少量試作や金型費をかけたくない場合の有効な手段と言えます。

抜き加工・裁断加工

抜き加工は、薄いゴム板に金属製や木製の抜き型(刃型)を用いて打ち抜き、平面的な形状部品を作る方法です。ガスケットやパッキンのようなドーナツ状・円板状の部品から、比較的複雑な2次元形状まで、板厚3mm程度までのゴムシートであれば抜き加工が検討されます。一度刃型を作れば繰り返し同じ形を量産でき、枚数が多い場合に効率的です。裁断加工はシートを裁断機やシャーリングで直線カットする方法で、長尺物を所定の幅にスリット状に切り分ける「スリッター加工」も含まれます。抜き加工・裁断加工はいずれも板状のゴム材料から平面的な部品を得る手法であり、ガスケット類やシール材の製作によく使われます。

押出成形(エクストルージョン)

押出成形は、押出機により加熱したゴムをダイ(口金)から押し出して連続的な製品を成形する方法です。ちょうどところてんを押し出すようなイメージで、ダイの形状を変えることで丸い紐状から四角形の帯状まで様々な断面形状の製品を長尺で作ることができます。ホースやチューブ、パッキン材、ゴム紐など同一断面の長い製品の大量生産に適した加工法です。押出成形品は必要な長さに切断して使用したり、輪切りにしてOリング材にすることもあります。大量生産向きで効率が良い反面、途中に複雑な三次元形状を持たせることはできないため、用途に応じて他の加工法と使い分けられます。

接着加工(ゴムライニング)

ゴムの接着加工とは、ゴム同士あるいはゴムと他の素材を接合する加工です。ゴム同士を接着する場合、未加硫の生ゴムや加硫接着剤を介在させて熱を加え、化学結合によって一体化させる「加硫接着」が用いられます。また、金属とゴムを貼り合わせるライニングも広く行われています。金属部品に専用の接着剤を塗布し、生ゴムを密着させて一緒に加熱加硫することで、金属とゴムが強固に接着された製品を作れます。たとえば薬品槽の内側にゴムを貼って耐薬品性を持たせるゴムライニングや、金属ローラーにゴムを被覆する加工が代表例です。接着加工では金属側の表面処理(脱脂やブラストなど)も品質を左右する重要な工程となります。ゴムとプラスチックを組み合わせるケースでは、高温加硫が困難なため接着剤や両面テープで貼り合わせる方法も取られます

その他の加工法(塗装・手加工など)

上記以外にも、用途に応じた様々な加工法があります。塗装加工は、ゴム表面に特殊な塗料を塗ってコーティングする手法です。天然ゴムや汎用合成ゴムは紫外線やオゾンで劣化(ひび割れや硬化)しやすいですが、弾性塗料でコーティングすることで日光やオゾンからゴムを保護できます。屋外で使用されるゴム製品の耐候性向上に有効です。手加工は、職人が刃物やヤスリを駆使してゴムを削ったり成形したりする昔ながらの方法です。大型すぎて機械にかからない製品や、ごく少量で型や治具を作るコストが見合わない場合に、手作業での加工が選択されることがあります。このようにゴム加工には多彩な方法がありますが、いずれも製品の形状・材質・数量に応じて使い分けられている点が特徴です。

 

ゴム材料の種類と特徴

一口にゴムと言っても、その素材には天然由来のものから合成されたものまで様々な種類があり、それぞれ性質や適する用途が異なります。ここでは代表的なゴム材料の種類と特徴を紹介します。適切な材料選定はゴム加工製品の性能を左右する重要ポイントです。

  • 天然ゴム(NR) – ゴムの木の樹液から作られる天然由来のゴム。非常に機械的強度(引張強度や伸び)が高く弾力性に優れるため、自動車の防振ゴムなど大きな荷重がかかる用途に適しています。一方で耐油性がないため、オイルに触れる環境では使用できません。例えば天然ゴムをオイルシールに使うと、オイルで膨潤・劣化してドロドロに溶けてしまいます。耐油用途には後述のNBRなど耐油合成ゴムを選ぶ必要があります。また、天然ゴムは耐候性(屋外での紫外線やオゾンに対する耐久性)も低く、直射日光下では硬化してボロボロになります。したがって屋外用途や油まみれの環境には不向きですが、その高い強度と弾性からタイヤをはじめ防振パーツなどに現在も広く使われています。

  • ブタジエンゴム(BR)・スチレンブタジエンゴム(SBR) – いずれも合成ゴムの代表格で、タイヤ材料として天然ゴムとともに大量に使われる汎用ゴムです。BR(ブタジエンゴム)は耐摩耗性と弾性に優れ、SBR(スチレンブタジエンゴム)はBRにスチレンを共重合したもので強度や耐摩耗性のバランスが良い特徴があります。低温耐性も比較的高いため寒冷地でも硬化しにくく、タイヤや工業用ゴムで汎用的に利用されます。ただし耐油性や耐熱性は低いため、オイルシールなど油がかかる部位や高温になる用途には適していません。

  • ニトリルゴム(NBR) – アクリロニトリル・ブタジエンゴムとも呼ばれ、耐油性に非常に優れた合成ゴムです。自動車や産業機械のオイルシール、ガスケット、燃料ホースなど、油に触れる環境で頻繁に使用されます。耐摩耗性や機械強度も実用上十分で、価格も比較的安価なため汎用的です。ただし高温には弱く、おおむね100℃程度が連続使用の上限となります。高温下での耐油用途では後述のアクリルゴムやフッ素ゴムなどが検討されます。

  • クロロプレンゴム(CR) – 商品名「ネオプレン」で知られる合成ゴムで、耐熱性・耐油性・機械的強度・耐候性・耐薬品性などがバランス良く優れた特性を持つ万能型のゴムです。燃油や薬品に対する耐性はNBRやフッ素ゴムに及ばないものの、総合的な性能のバランスが良いため汎用品として広く使用されています。屋外耐候性も天然ゴムより高いため、工業用品から建設機械部品、防護手袋、接着剤の原料まで用途は多岐にわたります。

  • エチレンプロピレンゴム(EPDM) – エチレンとプロピレンを主原料とした合成ゴムで、耐候性(耐紫外線・耐オゾン性)に極めて優れるのが最大の特徴です。また耐水性・耐寒性にも優れており、屋外で長期間使用される自動車部品(ウェザーストリップやドアシール)、建設機械部品、屋外ケーブルの絶縁被覆などに多用されています。逆に油やガソリンには侵されやすいため、耐油用途には不向きです。適切な環境で使用すれば寿命が長く、価格も比較的安価で扱いやすいゴムと言えます。

  • シリコンゴム(Q, VMQ) – シリコーン樹脂を原料とする合成ゴムで、200℃近い高温から-50℃程度の低温まで耐えうる非常に広い耐熱・耐寒温度域を持ちます。また耐薬品性・耐候性にも優れ、生体適合性も高いことから、食品機械や医療用器具のパッキン類にも用いられます。他のゴムに比べ柔らかく、半透明〜乳白色の見た目を持つのも特徴です。デメリットは機械的強度や耐摩耗性があまり高くない点と、ゴム材料としては価格が割高な点です。しかしながら、一般のゴムでは耐えられない高温環境やクリーンな用途にはシリコンゴムが重宝されています。

  • フッ素ゴム(FKM) – フッ素系高分子を原料とした合成ゴムで、耐熱性・耐油性・耐薬品性・耐候性・難燃性などあらゆる特性に極めて優れるスーパーゴムです。自動車の燃料系シール部品や航空宇宙分野、半導体製造装置のシール、化学プラント用ライニングなど、過酷な環境下で使われます。唯一の弱点は価格が非常に高い点で、同程度の性能が不要な用途にまで使うとコスト増になってしまいます。要求される性能に見合った場面でのみ採用される、高機能だが高価な素材です。

  • ウレタンゴム(PU) – 正確にはゴムではなく熱硬化性ポリウレタン樹脂ですが、ゴム状の弾性体として扱われます。機械的強度や耐摩耗性が非常に高いため、産業用ロールの表面、印刷機や搬送機のローラー、衝撃吸収クッション、車両用タイヤ代替キャスターなどに使われます。耐油性もある程度持ち合わせますが、耐熱性は中程度で120℃付近が限界です。また硬度の調整範囲が広く、軟らかいものから硬質なものまで製造可能です。欠点としては耐候性や耐酸・アルカリ性がやや劣る点や、大量生産向きではない点があります。少量多品種の特殊用途で威力を発揮する素材です。

  • ブチルゴム(IIR) – イソブチレンゴムとも。ガス透過しにくく気体を通しにくい性質が特徴で、自動車や自転車のチューブ、防振材(制振材)などに使われます。内部摩擦が大きく振動エネルギーを熱に変換しやすいため衝撃吸収・制振特性が高いゴムでもあります。耐候性も良好ですが、耐油性は低く、引張強度もそれほど高くありません。日常製品ではガムテープの粘着剤の原料にも利用されています。

 

以上のように、多種多様なゴム材料が存在し、それぞれ強みと弱み、適した用途があります。製品の使用環境や求められる性能に応じて最適なゴム材料を選定することが、ゴム加工では非常に重要です。「高性能だから」と安易に高価なゴムを選ぶのではなく、例えば常温で油に触れる程度であれば安価なNBRで十分、一方で200℃の高温で強酸に触れる環境ならフッ素ゴムでなければ耐えられない、というように必要な性能を満たせる最適素材を見極めることがポイントです。

 

ゴム加工のメリット・デメリット

ゴム加工ならではの長所と短所について整理します。他の材料にはないゴム独特のメリットがある一方、扱いに注意すべき点も存在します。

ゴム製品のメリット・特長

ゴム素材には、金属やプラスチックにはないユニークな特長がいくつもあります。第一に柔軟で変形することです。ゴムは力を加えると形が変わり、外力を外すと元に戻る弾性を持ちます。このため多少寸法に誤差があっても変形で吸収でき、部品の嵌め合わせや組み付けが容易です。例えばゴム製Oリングは多少サイズが違っても伸縮してシール箇所にはめ込むことができます。第二に衝撃吸収性です。ゴムは振動や衝撃を和らげるのに優れており、自動車のエンジンマウントや建物の免震ゴム、床衝撃音を低減する防振ゴムなどに利用されています。振動エネルギーを内部摩擦で熱に変換する性質(高いtanδ)により、揺れや衝撃を効率的に減衰させられるのです。第三に高いシール性です。ゴムは押しつけると密着して隙間を埋めるため、液体や気体を漏らさないシール材として最適です。ガスケット、パッキン、Oリングといったシール部品はゴムなくして成立しません。またゴムは非導電性(絶縁性)が高く、電気や熱を通しにくい点もメリットです。このため電線の被覆や電子機器の絶縁ブッシュとして重宝されます。さらに軽量で比重が1前後と金属より圧倒的に軽く、部品の軽量化にも寄与します。総じて、ゴム製品は柔軟さと弾性による適応力衝撃・振動の緩和能力優れた密封性などのメリットを持ち、「クッション材」「シール材」「防振材」などとして他素材には代えがたい役割を果たしています。

ゴム加工のデメリット・注意点

一方、ゴム特有の短所や注意すべき点もあります。まず寸法精度の面で制約があります。前述のようにゴムは柔らかく変形しやすいため、金属部品のような高い寸法公差を出すことが困難です。加工中もたわんだり刃物を逃れてしまうため、±0.1mm単位の厳密な加工には向きません。ゴム加工品では用途に応じてある程度の寸法誤差を許容する設計が求められます。次に経年劣化の問題があります。ゴムは時間や環境によって徐々に劣化し、硬化・ひび割れ・変色・強度低下などが起こります。特に紫外線(日光)やオゾンに弱く、屋外に曝されると素材によっては数年でひび割れることもあります。適切な材料選定や表面塗装による対策が必要です。また温度依存性も大きく、低温では硬くなり高温では軟らかくなるため、使用温度範囲を逸脱すると本来の性能を発揮できません。さらに、一部のゴム材料には汚染性(ブリードや色移り)がある点にも注意が必要です。例えばゴム製品を長期間接触させておくと、添加剤がにじみ出して接触面を黒く汚染したり、可塑剤が移行してプラスチック部品を劣化させたりする場合があります。その他、ゴムはリサイクルが難しい素材でもあります。加硫されたゴムは熱で溶かして再成形することができず、廃棄時は粉砕して舗装材に混ぜるなど限られた再利用しかできません(近年はリサイクル技術の研究も進んでいます)。最後に、生産面では大量生産か少量生産かで適切な手法が異なることも留意点です。金型を用いた成形は初期費用こそ高いものの量産効果で安価にでき、一方で切削加工は初期費用ゼロでも単価は高めになるため、ロット数によってコスト構造が大きく変わります。このようにゴム加工にはいくつかのデメリットもありますが、これらを理解し適切に対応すればゴムのメリットを最大限に活かすことができます。

 

ゴム加工の工程(製造の流れ)

では実際にゴム製品を作る場合、どのような手順で進められるのでしょうか。ここでは、ゴム加工による製品づくりの一般的な流れを紹介します。

  1. 要求仕様の確認・設計:まずは作りたい製品の形状・寸法、公差、使用条件(温度や接触する液体など)、必要な性能(硬さ・強度・弾性など)を明確にします。これに基づき、適切なゴム材料や必要な加工方法の検討を行います。例えば「油圧機器のシール用部品を作りたい」「屋外で使うクッション材が欲しい」など目的を整理し、それに見合う素材候補(耐油性が必要ならNBR、屋外ならEPDM等)や加工法(大量に作るなら金型成形、少数試作なら切削等)を検討します

  2. 素材選定・試作:次に要求に合ったゴム素材を選定し、必要に応じて試作品を作ります。試作段階では、いきなり金型を作らずに切削加工や簡易な型で少量の試作品を製作することが多いです。試作品により形状や性能を評価し、問題があれば設計修正や素材変更を行います。また色の確認や実機組み付けテストなどもこの段階で実施します。

  3. 金型製作・量産加工:試作で問題がなければ、量産用の金型を設計・製作します(※切削加工で対応可能な少量生産の場合は金型製作は省略します)。金型は製品形状に合わせた金属製の型で、精密な加工技術で作られます。金型完成後、実際に成形加工(プレス成形や射出成形等)を行って量産を開始します。成形条件(温度・時間・圧力など)を適切に設定し、品質が安定するよう成形を繰り返します。成形直後の製品にはバリ(不要なはみ出し部分)が付いていることも多く、必要に応じてバリ取り(トリミング)など仕上げ加工を行います。なお、金型製作には製品サイズや形状にもよりますが数万円から数十万円程度の費用がかかることが一般的です。この初期投資を回収するにはある程度まとまった生産数が必要になるため、ロット数と金型費のバランスも計画時に考慮します。

  4. 検査・仕上げ・納品:量産されたゴム製品は、寸法や外観、物性など所定の品質検査を経て合格品のみ出荷されます。シール部品であればリーク試験、ゴム硬度の測定や引張強度試験などが行われる場合もあります。要求精度が高い場合には工業用ゴム製品の公差等級表に基づいた検査基準で寸法確認が行われます。検査と仕上げを終えた製品は梱包され、ユーザーのもとへ納品されます。以上がゴム加工による製造のおおまかな流れです。製品の種類や企業によって手順は多少異なりますが、設計・試作・量産・検査というプロセス自体は共通しています。

ゴム加工の価格・費用目安

ゴム加工品の価格は、選択する加工方法や製造ロット、材料種類、要求仕様などによって大きく変動します。ここでは主な費用要因と概算の目安について説明します。

  • 初期費用(型費用):金型成形を行う場合、まず金型製作費が発生します。金型費用は製品サイズ・形状や型材質によりますが、小型の簡易型でも数万円、大型で精密な型では数十万円以上になることもあります。この初期投資は一度きりですが、製品単価に加算する形となるため、大量生産で単価を下げる場合に金型投資の効果が現れることになります。一方で、切削加工や抜き加工など金型不要の方法では初期費用はほぼゼロです。その代わり、加工に手間がかかるぶん1個あたりの製品単価は金型成形より高めに設定されます

  • 数量と単価の関係:上記の通り、生産ロット数は価格に直結します。プレス成形では金型作成後は1個あたりの成形時間が短く量産効果で製品単価が大幅に低下します。例えば数千個以上作る場合は金型を作って成形したほうが総コストは安くなるでしょう。逆に少量生産では初期費用のかからない方法を選んだほうが安価に済むケースが多いです。1個のみの製作や頻繁な設計変更が見込まれる場合、切削加工や手加工で対応するほうが結果的にコスト有利となります。おおまかな目安ですが、「一度に100~1000個以上作るなら金型成形、それ未満なら金型なし加工も検討」というのが一つの判断基準です。

  • 材料費:ゴム素材自体の価格も考慮が必要です。ゴム材料は種類によって価格差が大きく、一般的に高機能なゴムほど高価です。例えばシリコンゴムやフッ素ゴムは天然ゴムやNBRに比べて数倍の材料単価となることがあります。しかし用途によってはその高価な材料が必要不可欠です。不要に高性能な材料を使うと無駄なコスト増になるため、要求仕様に見合った素材を選ぶことが重要です。また材料の購入量(ロット)によっても単価は変動し、少量だけ特殊材料を仕入れる場合は割高になります。

  • 加工難易度・工程数:製品形状が複雑で加工工程が多いもの(例えば成形後に穴開けや金属との接着を伴うなど)は、その分人手や機械加工のコストがかかります。二次加工や仕上げ工程(バリ取り・研磨・塗装など)が必要な場合もコストアップ要因です。また寸法精度や品質要求が厳しい場合、検査工数や不良率の見込み分も加味して価格設定されます。納期が非常に短い「特急対応」の場合は、ラインの段取り変更や優先処理のため追加費用が発生することもあります

以上を踏まえ、ゴム加工品の価格はケースバイケースとなります。目安として、「小さなゴムパッキン1個あたり数十円~数百円、ただし初回に数万円の型費用必要」といった具合です。大量発注すれば単価は下がり、逆に1個だけ作るなら1個当たり数千円以上かかることもあります。最適なコストで製品を作るには、必要な数量と品質に応じて適切な加工方法を選択することが鍵になります。見積もり時には複数の業者に相談し、加工方法や材料の提案を受けながらコストダウンの余地を探るのも良いでしょう

 

ゴム加工製品の事例紹介

実際にゴム加工によってどのような製品が作られているのか、いくつか具体例を挙げます。

  • 自動車用防振ブッシュ:自動車のエンジンやサスペンション周りには、金属とゴムを組み合わせた防振ブッシュという部品が多数使われています。これは金属部材とゴムを一体成形(加硫接着)した製品で、走行中の振動や衝撃をゴムの弾性で吸収する役割があります。素材には高い機械強度と耐久性を持つ天然ゴムや、耐候性も考慮してクロロプレンゴムが使われます。金属とゴムの接着技術が要求される典型的事例です。

  • オイルシール・パッキン類:産業機械や車両の油圧・空圧機器には、軸や配管の継ぎ目からオイルや空気が漏れないようにするシール部品(Oリング、パッキン)が欠かせません。これらは主に耐油性のあるNBRやフッ素ゴムで金型成形されています。大量生産される標準部品も多く、JIS企画のOリングなどは規格化された金型で量産され単価も安価です。一方、特殊なサイズのシールはゴム板からの抜き加工や、押出したゴム紐をつないで作ることもあります。シール材は漏れを防ぐ重要保安部品であり、ゴム加工製品の中でも非常に需要が高い分野です。

  • 工業用ホース・チューブ:ゴム製ホースも身近なゴム加工品です。消防用ホースや燃料ホース、ケミカルプラントで使う耐薬品ホースまで種類は様々ですが、多くは押出成形でチューブ状に成形したあと必要な長さに切って製品化します。内側に布や金属補強を入れたり、外側をさらにゴムで被覆(ライニング)して耐圧性を高めるなど複合構造になっているものもあります。素材は用途によって、耐油ならNBR、耐薬品ならフッ素ゴムライニング、耐候用途ならEPDM、と使い分けられます。

  • 建築・土木用ゴム:建物の基礎に敷く免震ゴムは、厚いゴム板と鉄板を交互に積層して加硫接着した巨大なゴム部品です。地震エネルギーを吸収し建物に伝わる揺れを減衰させる役割を持ちます。素材には耐候性・耐久性の高い天然ゴムやクロロプレンゴムが用いられます。また橋梁の支座には高硬度のゴム板が使われ、トンネルや建物の目地シールにも発泡ゴムや合成ゴムが充填されています。いずれも大きな力や環境に耐えるよう設計・加工された事例です。

  • 電子機器のゴム部品:パソコンのキーボードやリモコンのボタンには、内部にシリコンゴムのキースイッチが使われています。シリコンゴムの弾性で押し心地と電気接点のON/OFFを両立する設計です。これらは薄いシート状の金型に多数個取りで射出成形されています。その他、スマートフォンの防水パッキンや家電製品のコード引き出し部のグロメット(配線保護部品)など、電子機器の随所に小さなゴム加工品が組み込まれています。

以上のように、ゴム加工の事例は挙げればきりがないほど多種多様です。私たちの身の回りの製品にも、見えないところでゴム加工技術が活かされた部品が多数存在しているのです。

 

ゴム加工業者の選び方・企業の紹介

ゴム加工品の製造を依頼したい場合、どのようなポイントで業者(加工会社)を選定すべきでしょうか。ここではゴム加工業者選びの重要ポイントを解説します。

  • 対応できる材料・加工法の幅:まず検討すべきは、その業者が希望するゴム材料や加工方法に対応しているかです。ゴムには前述したように種類が多く、業者によって得意な材料・不得意な材料があります。例えばシリコンゴムの加工実績が豊富な会社、ウレタン専業の会社など様々です。また、必要な加工法(成形・切削・押出・ライニング等)に対応しているかも確認しましょう。一社で複数の加工法に対応しワンストップで製作してくれるところもあります。作りたい製品に適した材料・工法に強みを持つ業者を選ぶことで、試作から量産までスムーズに進められます。

  • 加工精度・品質管理:要求する寸法精度や品質レベルを満たせるかも重要なポイントです。工業用ゴム製品にはJISの公差等級がありますが、金型成形であれば精密な1級公差、抜き加工なら中級程度、といった具合に業者ごとに対応できる精度範囲があります。もし高精度が必要な場合は、その実績や測定設備の有無を確認すると安心です。またISO9001等の品質管理認証を取得しているか、大手向けの納入実績があるかなども信頼性の指標になります。

  • 対応ロット規模・納期希望する生産数量に対応可能かも大切です。大量生産が得意な企業もあれば、1個からの試作対応に強みを持つ企業もあります。例えば、小ロット短納期を掲げる町工場的な所では1個から気軽に注文できますし、逆に大量ロット専業の工場では小注文は受け付けない場合もあります。自社の必要数量に見合った規模の業者を選ぶことで無駄がありません。納期対応力も確認しましょう。急ぎの案件に柔軟に対応してくれるか、生産設備に余力があるか、といった点です。問い合わせ時にだいたいの希望納期を伝え、対応可能か確認しておくと安心です。

  • コスト対応力・提案力:見積もりを取った際の価格設定の妥当性ももちろん重要です。できれば複数社から見積もりを取り、金型代・単価・納期などを比較検討するとよいでしょう。その中で、単に価格が安いだけでなく「なぜその加工法を選ぶと有利か」「材質を変えるとコストダウンできる」など提案をしてくれる業者は信頼できます。創業が古く経験豊富な会社や、自社で多様な加工法を持つ会社は、こちらのニーズに応じて最適な加工プランを提案してくれる傾向があります。例えば「この形状なら型を作らず切削で行きましょう」「大量生産に移行するなら簡易金型を安価に作れます」といった具合です。そうした提案力も業者選びでは重要なファクターです。

以上のポイントを総合して、自社のニーズにマッチするゴム加工業者を選定すると良いでしょう。事前にできるだけ情報収集を行い、可能であれば工場見学や技術者との打ち合わせをしてみるのもおすすめです。適切なパートナーを選ぶことで、製品開発・製造は格段にスムーズに進み、満足のいくゴム加工品を手にすることができるでしょう。

 

前川化学工業の強みと対応力

前川化学工業株式会社は、京都に本社を置く創業60年を超えるゴム・樹脂加工メーカーです。工業用のゴム成型品・樹脂加工品において、多品種小ロットから量産品まで幅広く対応しており、設計段階から製造・納品までワンストップでお客様の課題解決を支援しています。
以下では、当社の対応力や技術力、品質管理体制など、実際の製造依頼においてご評価いただいている強みをご紹介いたします。

01. ゴム・樹脂製品の“一体成形”に対応

他社では分業になりがちなゴム成型と樹脂加工を、当社では社内一貫で対応。MCナイロンとゴムの複合製品や、異素材の接着成形にも豊富な実績があります。

02. 試作から量産まで柔軟対応

1個から数千個まで、ロット規模に応じた最適な加工法を選定し、コスト・納期・品質のバランスを最適化します。試作段階では迅速なフィードバックと対応力で評価をいただいています。

03. 原材料調達から納品まで一貫対応

金型設計、素材選定、加工、仕上げ、検査、納品までを社内で完結。エンプラからスーパーエンプラまで幅広い材料に対応しており、金属加工・組立工程も含めた総合提案が可能です。

04. 金型移管や図面なし製品にも対応

現在使用中の金型の引き継ぎ生産も可能です。図面がない場合でも、現物をもとに3Dスキャンやリバースエンジニアリングによって製品再現をサポートします。

05. 品質管理とスピーディーな納品体制

ISO9001に基づいた品質管理体制を構築。関西圏では自社便による納品が可能で、急ぎや時間指定などにも柔軟に対応できます。

06. 見て、聞いて、確かめられる工場開放

ご希望に応じて京都本社を中心に工場見学の受け入れを実施中。設備や製造現場の見学はもちろん、オンラインでのご紹介にも対応しています。

07. 技術相談・資料請求もお気軽に

図面段階からの相談や、材料選定、加工法の提案まで対応可能。製品サンプルや資料請求も承っております。「これ、作れる?」という初期段階でも、ぜひご相談ください。

 

まとめ

ゴム加工とは何か」から始まり、ゴム加工の方法、素材、用途、工程、メリット・デメリット、費用、事例、業者の選び方まで一通り解説しました。ゴム加工は、その柔軟な素材特性と多彩な加工法によって、我々の生活や産業を支える数多くの製品を生み出しています。金属やプラスチックにはないゴム独自の利点(弾性や衝撃吸収性など)を活かすことで可能になる製品も多く存在します。一方で、ゴムならではの扱いの難しさ(寸法精度や経年劣化など)もありますが、適切な素材選定・設計・加工法の選択によってそれらは十分克服可能です。本記事の内容が、ゴム加工についての疑問を解消し、これからゴム製品の製作を検討している方の一助になれば幸いです。ゴム加工品を検討する際はぜひここで述べたポイントを参考に、最適な方法とパートナーを選んでください。そうすることで、目的にかなった高品質なゴム製品を実現できるでしょう。