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2025 6.25

ABS樹脂の特性は?安全性や加工方法をわかりやすく解説

ABS樹脂の特性は?安全性や加工方法をわかりやすく解説

ABS樹脂の特性やメリット・デメリット、切削・射出・真空成形などの加工方法を丁寧に解説。安全対策や製造ステップも網羅。ABS樹脂加工をご検討の企業様は、確かな実績を持つ前川化学工業にご相談ください。

ABS樹脂は、私たちの生活に欠かせない合成樹脂のひとつです。家電製品や自動車の内装、日用品など、幅広い分野で使用されています。本記事では、ABS樹脂の基本的な性質や特長、加工方法、安全性までをわかりやすく解説します。ABS樹脂に関して幅広く解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

ABS樹脂とは?

ABS樹脂は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンという3つのモノマーを組み合わせて作られる合成樹脂です。この構成により、耐衝撃性、成形性、加工性に優れたバランスのよい性質を持ちます。ABS樹脂は、工業製品から日用品、ホビー用途まで、様々な場面で活用されています。射出成形、切削、接着などの加工が可能で、DIYや自作プロジェクトにも適している素材です。

ABS樹脂の特長

ABS樹脂には、強度、剛性、耐衝撃性のバランスが優れており、割れにくいという特長があります。また、切削、接着、塗装などの二次加工がしやすく、加工の自由度が高いことも魅力のひとつです。表面には光沢があり、見た目が美しいため、外観部品としてもよく利用されます。熱可塑性樹脂(熱を加えるとやわらかくなり、冷やすと固まる性質を持つプラスチック)であるため、再加熱によって成形し直すことが可能です。

ABS樹脂の弱み

ABS樹脂にはいくつかの弱点も存在します。まず、耐熱温度が低いため、高温環境や加熱加工には適していません。また、紫外線や薬品に対する耐性が低く、屋外や化学用途には不向きです。さらに、静電気を帯びやすくホコリが付着しやすい点もデメリットといえるでしょう。成形時には収縮や反りが起こりやすく、精密加工を行う際には工夫が必要です。加えて、加熱時には特有の臭いが発生することがあるため、換気や安全対策が重要です。

ABS樹脂が利用される製品例

ABS樹脂は、家電製品の筐体やリモコン、自動車の内装パーツ、プラモデルやおもちゃ、さらには工具や文具などの樹脂パーツといった、私たちの身の回りの製品に幅広く使用されています。

自作に使えるABS樹脂の加工方法

ABS樹脂は多様な方法で加工できる素材です。ここでは、代表的な加工手法について紹介します。

切削加工(手動&CNC)

手動での切削には、細目のレシプロソーやアクリルカッター、または一般的なカッターを使用することで、比較的簡単に形を整えることが可能です。

一方、CNC加工では、スピンドル速度は10,000〜20,000RPM、送り速度は50〜150 IPMが目安とされます。使用する工具にはHSSや一枚刃のビットが適しており、エアブラストなどの冷却方法を併用することで、熱による変形を防ぐことができます。

3Dプリンタによる造形(FDM)

ABSフィラメントを使って、FDM方式での3D造形も可能です。造形前には3D-CADを用いて形状を設計し、サポート材の配置を最適化するなどの工夫が求められます。造形時にはエンクロージャー付きの3Dプリンタを使用することで、反りや割れを防ぎ、精度の高い出力が可能になります。

真空注型や射出成形の自作術

小規模な製造を行う際には、シリコン型を用いた真空注型や簡易的な射出成形が有効です。エポキシ樹脂などを用いて簡易金型を作成し、ABSを注入して成形することで、試作品や少量生産品を効率的に作ることができます。

ABS樹脂を加工する上での安全対策と注意点

ABS樹脂を加工する際には、いくつかの安全対策を講じる必要があります。まず、加熱によって素材が溶けたり変形する可能性があるため、温度管理が重要です。また、切削や加熱の際には微細な屑や蒸気が発生することがあるため、作業環境には換気設備や排気システムを整えておくことが推奨されます。3Dプリンタや切削機器を使用する場合には、エンクロージャー内での火災リスクを考慮し、適切な安全対策を行いましょう。

ABS樹脂の安全性は高い

ABS樹脂は、安全性の高い材料として広く認識されています。実際に、食品容器や子供向け玩具といった分野にも使用されており、通常の使用環境下では有害な化学物質をほとんど発生させません。また、発がん性に関する懸念も、通常使用においては報告されていません。

ただし、加工中には微細な粉塵やガスが発生する可能性があるため、換気を徹底し、マスクやゴーグルといった保護具を着用することで、リスクを最小限に抑えることが可能です。SDS(化学物質安全性データシート)や各種安全評価機関のデータにおいても、ABSは「低リスク」な素材として分類されていることが多く、信頼性の高い材料といえます。

加工ステップ別の作業フロー例

ABS樹脂を加工する際の典型的な作業手順を、加工方式別に紹介します。

切削方式の例

まず、材料を所定のサイズにカットし、作業台に仮固定します。その後、手動またはCNC機器を用いて切削を行い、最後にやすりやペーパーを使って仕上げ処理を行います。

3Dプリント方式の例

はじめに3D-CADソフトを用いて設計を行い、スライサーソフトで出力用の設定を行います。次に、エンクロージャー付きの3Dプリンタで造形を実施し、出力後はサポート材の除去や表面の研磨などの後処理を施します。

ABS樹脂加工を専門メーカーに依頼するメリット

ABS樹脂の加工には自作でも対応可能ですが、複雑な形状や精密な仕上がりが求められる場合には、専門の加工業者に依頼することが有効です。専門メーカーに依頼することで、材料選定や設計段階から技術的なサポートを受けられ、試作や量産における失敗や手戻りのリスクを軽減できます。

また、高精度な加工設備と豊富なノウハウを持つプロフェッショナルによって、品質の高い製品を短納期で提供してもらえる点も、大きなメリットといえるでしょう。

前川化学工業の樹脂加工サービス

前川化学工業は、ABS樹脂など合成樹脂製品を製造する専門メーカーです。当社の特徴や強みを紹介します。

専用生産拠点による対応

当社では、製造方法や素材に合わせて3拠点の専用生産工場を設け、一貫した生産体制を整えています。京都府内に配置した複数の工場(ゴム成形工場・樹脂成形工場・加工組立工場)を活用することで、少量多品種の試作から大量生産まで幅広く対応できる柔軟な生産対応力を発揮します。国内拠点に加え海外工場とも連携し、製品の特性や生産量に応じて最適な拠点で製造を行うことで、安定供給と短納期を実現しています。

技術力で多様なニーズに対応

前川化学工業は長年培ったノウハウと高度なプラスチック加工技術により、複雑な形状や特殊な機能を持たせた樹脂製品にも対応可能です。製品設計段階から最適な金型構造や材料選定を提案し、高精度かつ複雑な成型品を実現します。さらに、生産プロセスの工夫や自動化により樹脂成型品のコスト削減にも取り組んでいます。最新のインジェクション成形機をはじめとする先端設備を積極的に導入し、高い寸法精度と安定品質が要求される製品の量産にも万全の体制で応えています。こうした技術力に支えられ、多様化するお客様のニーズに対して柔軟かつ的確に対応できる点が当社サービスの強みです。

ゴム成型品の一体加工を実現

当社では樹脂成型品とゴム成型品の一体成型・一体加工にも対応しており、樹脂とゴムを組み合わせた部品や製品の製造もワンストップで対応可能です。例えば樹脂製インサート部品にゴムを一体加硫・成型するような複合製品の製作実績も豊富にあります。さらに、ゴムや樹脂以外にもスポンジ、ホース・ベルト、電気絶縁材料といった様々な素材を活用するノウハウを有しており、お客様のニーズに応じて最適な素材選定や製造方法をご提案できます。

これにより、「樹脂部品+ゴム部品」のような異種素材の組み合わせが必要なケースでも、材料調達から成型・加工・接合まで一括してお任せいただけます。

 

ABS樹脂加工なら前川化学工業にお任せください

ABS樹脂は耐衝撃性や剛性のバランスに優れ、家電製品の筐体や自動車部品など幅広い用途で使用される汎用樹脂です。本記事の前半ではABS樹脂の特徴や加工方法について解説しました。こうしたABS樹脂の加工において重要になるのが、素材特性を踏まえた金型設計や成形条件の最適化です。前川化学工業は創業から半世紀以上の歴史を持つものづくり企業で、工業用ゴム製品と合成樹脂製品の成型・加工を得意としております。原材料の選定・調達から加工・成形・組立に至るまでワンストップで対応できる体制を確立し、50年以上にわたり培った知見でお客様のニーズにお応えしてまいりました。ABS樹脂加工のことなら前川化学工業にご相談ください。