2026 2.3
「天然ゴム」は、弾力性や耐摩耗性に優れ、ゴムらしい“しなやかさ”を最も発揮できる材料の一つです。一方で、油・熱・紫外線(屋外環境)に弱いなどの弱点もあり、「天然ゴムを選べば安心」とは言い切れません。
工業用ゴム部品では、材料そのものの知識に加えて、使用環境・必要性能・ロット(試作〜量産)に合わせた“加工・成形の設計”が重要です。本記事では、天然ゴム(NR)の基礎から、合成ゴムとの使い分け、部品化で失敗しないチェックポイントまでをわかりやすく整理します。

天然ゴム(NR:Natural Rubber)は、ゴムの木(パラゴムノキ)の樹液「ラテックス」を原料にしたゴムです。ラテックスを凝固・乾燥させた原料ゴムを、配合(添加剤の設計)と加硫(架橋)によって、弾力や強度を持つゴム製品に仕上げます。
主成分は「シス-1,4-ポリイソプレン」という高分子で、非常に高い弾性(反発力)と、引張・引裂などの機械的強度を両立できるのが特徴です。天然由来のため、産地や季節などの影響で品質・価格が変動しやすい点は、工業用途では注意が必要です。

天然ゴムは「総合力が高い汎用ゴム」として広く使われています。特に“繰り返し変形する部品”で強みが出ます。
なお、デメリットは“配合・設計・加工”で緩和できるケースがあります。例えば、屋外使用での劣化リスクがある場合は、材料をEPDMなどへ変更するだけでなく、用途によっては表面コーティングや形状設計(応力集中を避ける)で寿命を延ばせることがあります。

天然ゴムは、耐久性と弾性のバランスが良く、日用品から産業用途まで幅広く使われます。特にタイヤ用途が多いことはよく知られていますが、工業用では次のような部品で採用されやすい素材です。
【工業用途でよくある例】
“同じ形”に見えても、使用環境が少し違うだけで最適材が変わるのがゴム部品の難しさです。天然ゴムが向くケース/向かないケースを、次章で合成ゴムと比較しながら整理します。

天然ゴムと合成ゴムの違いは「原料」だけではありません。工業部品の観点では、“使用環境に対する強さ(耐油・耐候・耐熱など)”が大きな判断材料になります。
材料選定の基本は、まず「その部品が何に触れ、どんな温度で、どれくらいの時間使われるか」を言語化することです。天然ゴムの弾性が魅力でも、油が常時付着するならNBR、屋外で長期使用ならEPDM、薬品や高温ならフッ素ゴム、といった具合に得意分野で使い分けます。
【代表的なゴムの使い分け(目安)】
「天然ゴムの弱点を合成ゴムで補う」「必要性能が複数あるため配合で調整する」など、最終的には“部品要件に合わせて設計する”のが現実的です。迷ったら、使用条件を共有して加工メーカーに相談すると、過剰品質やコスト増を避けやすくなります。

天然ゴムは、取引形態や規格の考え方で大きく分けると、主に「ラテックス」「RSS」「TSR」の3系統で語られることが多いです。
ラテックスは液状の天然ゴムで、凝固しないように安定化させたものです。ディッピング(浸漬)で成形する手袋や風船、接着剤のベース材など、液状であることを活かす用途で使われます。
RSSは、シート状に成形・乾燥(燻煙)し、外観(色調や異物など)によって等級付けされるタイプです。歴史的に広く流通しており、用途に応じて等級を選びます。
TSRは、物性値やムーニー粘度などの“技術的指標”で規格化された天然ゴムで、ブロック状で流通します。工業用部品では、品質のばらつきを抑えるために、技術的格付けの原料を前提に検討されることも多いです(生産国ごとにSMR、STR、SIRなどの呼称があります)。
天然ゴムの検索意図には「特徴や用途を知りたい」だけでなく、「結局うちの部品に使えるのか」「見積もり・試作がスムーズに進む条件は何か」という実務ニーズも含まれます。そこで、部品化で失敗を減らすためのチェックポイントを、仕様書の観点で整理します。
天然ゴムは弾性・強度に優れますが、油・高温・屋外(紫外線・オゾン)では劣化が進みやすい素材です。以下の“触れるもの”を最初に洗い出すと、材料の方向性が決まりやすくなります。
ゴム部品は、硬度が少し変わるだけで、シール性・圧縮量・反力が大きく変化します。硬度はショアA(デュロメータ)で指定するのが一般的です。硬度の許容差(例:±5°)まで決めておくと、見積もりや品質条件がブレにくくなります。
また、寸法公差は「どこに当たって機能する部品か」で必要レベルが変わります。過度に厳しい公差はコスト増に直結するため、機能面で必要な箇所に絞って指定するのがポイントです。
天然ゴムは配合や成形条件によって、微細な気泡(ピンホール)や外観ムラが出る場合があります。外観基準(許容するキズ・凹み・バリの範囲)を、図面注記や別紙で合意しておくと、検収トラブルを防げます。
精密機器や半導体関連の周辺部品では、ゴム粉・微粒子・汚れが不具合に直結することがあります。必要に応じて、洗浄方法(純水超音波洗浄など)や、クリーン環境での乾燥・梱包、個包装の要否まで条件として明確化すると、後工程の手戻りを減らせます。
近年、天然ゴムは“性能”だけでなく、調達面の説明責任(トレーサビリティ、森林破壊リスクへの配慮)も重視されるようになっています。特に欧州向けのサプライチェーンでは、森林破壊に関連する製品を規制する制度の対象に天然ゴムが含まれ、適用開始時期が段階的に設定されています(大企業・中堅規模は2026年12月末、マイクロ・小規模は2027年6月末が目安)。
国内用途であっても、将来的に輸出やグローバル調達と接点がある場合は、原材料の由来情報、仕入れ先の管理、代替材の検討などを早めに整理しておくと、急な仕様変更や調達リスクに強くなります。
同じ形状でも、数量によって最適な加工法は変わります。たとえば、開発初期は金型不要の切削加工で短納期試作、量産では金型成形で単価を下げる、といった使い分けが基本です。将来の量産を見据える場合は、試作段階から材料・硬度・公差の方向性を固めておくと移行がスムーズになります。

天然ゴムは「材料」ですが、部品の性能は“加工・成形方法”で大きく変わります。目的は、狙った寸法・物性・外観を、必要数量で安定生産すること。ここでは代表的な加工法の特徴を整理します。
加熱した金型に材料を入れ、圧力をかけて成形する方法です。比較的幅広い形状に対応でき、量産にも向きます。成形条件や金型設計が品質を左右し、製品のバリ・気泡などの欠陥対策も重要です。
旋盤やフライス等で削り出して形を作る方法で、金型を作らずに試作や少量生産ができます。寸法の検証を素早く回したい開発段階で有効です。形状や硬度によって加工難度は変わるため、狙いの形状が切削向きかを事前に確認するとスムーズです。
関連記事:ゴム切削加工とは?金型不要で高精度な小ロット試作を実現する方法
押出機で連続的に押し出し、一定の断面形状を作る加工法です。チューブや長尺シール材など、同じ断面の製品を大量に作るのに向きます。押出後に加硫し、必要な長さにカットして部品化します。
関連記事:ゴム押出成形とは?工程・メリット・注意点を徹底解説
天然ゴムは配合剤の分散状態や加硫条件で、硬度・強度・寿命が変わります。また、成形時に空気を噛むとピンホールや外観不良の原因になり得ます。真空成形など、空気を抜きながら成形できる設備は、欠陥低減と品質安定に有効です。
天然ゴムの特性を理解したら、次は「用途に合うゴムをどう選ぶか」が判断の分かれ目になります。失敗しない材料選定の考え方を、前川化学工業の視点で整理した解説記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ゴム加工とは?—加工方法・素材・メリットから価格まで徹底解説

前川化学工業は、工業用ゴム製品と合成樹脂製品の成型加工を得意とし、材料選定・調達から配合、練り加工、成形までをワンストップで対応します。小ロットから対応し、特に中規模ロットでの製造に定評があるのも特長です。
天然ゴムが最適なケースもあれば、NBRやEPDMなど別素材のほうがトラブルを避けられるケースもあります。前川化学工業では、約400社規模のサプライヤーネットワークを活かし、用途・環境・コストのバランスを見ながら最適材を提案できます。
金型の設計・製造から、原材料選定、配合、練り、成形まで全工程に対応。さらに真空成形機などの設備と、品質保証部による管理体制で、品質の再現性を重視したものづくりを行います。
クリーンルーム(清浄度クラス1000)内で、純水による超音波洗浄から薬品によるウルトラクリーン洗浄まで対応し、製造〜洗浄〜乾燥〜梱包まで一貫して進められます。清浄度が求められる用途では、仕様に合わせた提案が可能です。
天然ゴム(NR)は、弾力性・機械強度・耐摩耗性に優れ、適材適所で非常に頼れる素材です。一方で耐油・耐熱・耐候の弱点もあるため、使用環境の整理と、ロットに合った加工法の選定が欠かせません。
「天然ゴムでいけるのか」「合成ゴムにすべきか」「試作から量産までどう進めるか」など、仕様が固まり切っていない段階でも、条件を共有すれば方向性は決められます。天然ゴム部品の材料選定・試作・量産をご検討の際は、前川化学工業へお気軽にご相談ください。
工業用ゴム製品と合成樹脂製品に関する
お問い合わせはこちらから
ゴム製品と樹脂製品の一体成型に対応いたします。また、ゴムや樹脂以外に、スポンジ・ホース / ベルト・電気絶縁材料など、
お客様のニーズを実現する最適な素材調達や製造方法をご提案いたします。
受付時間 月 ~ 金曜日 9:00 ~ 17:00