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2025 11.5

樹脂曲げ加工の基礎知識と依頼ガイド|方法・材料・注意点を徹底解説

樹脂曲げ加工とは、アクリルやポリカーボネート、塩ビ(PVC)といった熱可塑性樹脂の板材を加熱して軟らかくし、目的の形状に折り曲げ・曲面成形する加工技術です。機械のカバーや透明な保護パネル、ケース類など、金属やガラスでは実現しにくい軽量で割れにくい形状を作り出せるため、多くの製造業で利用されています。また、射出成形のように金型を新規作成する必要がない場合も多く(小ロットの試作や特注部品にも対応しやすい)ことから、コストやリードタイムの面でも魅力があります。

本記事では、樹脂板の曲げ加工について基本から詳しく解説し、材料選定のポイントや加工時の注意点、業者への依頼方法まで紹介します。樹脂の曲げ加工をご検討中の技術者・設計者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

樹脂の曲げ加工とはどんなもの?そのメリットと用途

樹脂の曲げ加工とは、平らなプラスチック板(樹脂板)に熱を加えて軟化させ、所定の角度や曲率に変形させる加工方法です。熱可塑性樹脂であれば加熱により柔らかくなり、冷却すると変形したまま固まります。この性質を利用して、板材から立体的な形状を作り出すのが曲げ加工です。例えば機械装置の安全カバーを透明樹脂で作る際、板を曲げてコの字型や円筒形に成形すれば、金属では実現しにくい軽量で割れにくいカバーが得られます。樹脂はガラスよりも透明性が高いもの(アクリル等)もあり、ショーケースや窓の代替としても使われます。

樹脂曲げ加工のメリットは、既成の板素材を用いるため表面の光沢や透明度を保てることです。射出成形のように溶融樹脂を金型に流し込む方法では、金型表面の状態が製品表面に転写されますが、板材からの曲げ加工では素材本来の表面品質をそのまま活かせます。また、金型レスで加工できる場合は初期費用を抑えられ、小ロットからでも対応しやすい点も利点です。複雑な立体形状であっても、真空成形や熱プレス成形など他の熱加工と組み合わせることで比較的低コストに製造可能で、小規模な試作から量産まで幅広いニーズに対応できます。

主な用途例:
樹脂曲げ加工は、産業機械の透明カバーや操作パネル、防護用の仕切り板、照明カバー、ディスプレイケース、食品容器、ダクトや樹脂製タンクの曲面部品など、様々な分野で活用されています。透明性や軽量性が求められる場面で金属・ガラスの代替材料として注目されており、設計の自由度が高まる加工技術と言えるでしょう。ただし、素材の種類や厚み、形状によって仕上がりや強度が大きく変わるため、適切な加工方法の選択とノウハウが重要になります。

樹脂曲げ加工の種類と方法

一口にプラスチックの曲げ加工と言っても、求める形状や精度、コストに応じていくつかの加工手法があります。大きく分けると「直線曲げ」と「R曲げ(曲面への曲げ)」の2種類が代表的で、それぞれ適した用途やメリット・デメリットが存在します。また、一部の素材では特殊な方法も可能です。ここでは代表的な曲げ加工方法と、その工程や特徴について解説します。

直線曲げ加工(ラインベンダー加工)

直線曲げ加工は、ヒーターで樹脂板の一部分(曲げたいライン)を局所加熱し、折り曲げて直角や鋭角を作る方法です。主に90度程度の折り曲げや、シャープな折り目のある形状を作る際に用いられます。加熱には棒状・線状のパイプヒーター(ストリップヒーター)を使用し、板の曲げ部分だけを狭い範囲で温めて軟化させます。十分に柔らかくなったら所定の角度まで素早く折り曲げ、角度を保持したまま冷却して形状を固定します。冷却は自然放冷が一般的ですが、正確な角度を出すために治具(ジグ)で挟んだ状態で冷やすこともあります。

直線曲げのメリットは、設備や工数が比較的シンプルで加工コストが低いことです。専用の型を作らずにヒーターと簡易治具だけで加工できるため、小ロット品や試作品にも向いています。また、局所加熱によって小さな曲げ半径(鋭角)を作ることが可能で、素材の板厚にもよりますが、外側の曲げRは板厚プラス数ミリ程度、内側は2~4mm程度のシャープな折り曲げが実現できます。そのため、箱状のケースや仕切り板のフチを直角に曲げるような加工によく利用されます。

一方、デメリットとして局所的な熱収縮による歪みや反りが生じやすい点が挙げられます。加熱した部分だけが縮むため、曲げた付近の板にわずかな波打ちやソリが発生することがあります。特に片側が長くもう片側が短いL字形状などでは、短い側に引っ張られて長辺が反ってしまう傾向があります。また、板厚が厚いもの(一般に5mmを超えるような厚板)では、表面と内部で温度差ができやすく均一に軟化させるのが難しいため、加熱部分の仕上がりが荒れたり曲がりが不十分になったりしがちです。アクリル板の場合、厚物を無理に折り曲げると曲げ内部の応力で後から亀裂が生じることもあります。こうした点から、直線曲げ加工が適する板厚はおおむね0.5~10mm程度とされ、それ以上の極厚板では次に述べるR曲げ加工(全面加熱による曲げ)を検討した方が良い場合もあります。

※厚板を直線曲げする際のコツとして、V字溝を事前に彫る方法があります。曲げる内側に45度程度の三角形の溝をあらかじめ切削しておくと、厚みが実質的に薄くなるため少ない力で折り曲げられます。ただし、この方法は溝部分に段差や弱点が残るため強度が下がり、曲げ後に溝を埋める処理も必要になる場合があります。強度や見た目が重要な製品では、できるだけ溝なしで加熱を十分行い曲げるのが望ましいでしょう。

R曲げ加工(大きな曲面への熱曲げ成形)

R曲げ加工は、樹脂板を大きな曲率半径で滑らかな曲面形状に曲げる加工方法です。曲げた内側・外側に丸みのあるカーブ(アール)が付くため、直線曲げに比べて応力集中が少なく強度が高い曲げ形状を作れます。また曲面部分の見た目も美しく、透明板であれば光学的な歪みも少ない仕上がりが期待できます。典型的な例としては、アクリル板で円筒形のタンクやドーム状カバーを作る場合などにR曲げが用いられます。

R曲げ加工には加熱方法の違いで部分加熱全面加熱(炉加熱)の二種類があります。部分加熱は、比較的小さな曲面R(目安としてR10~R50mm程度まで)を形成するときに適し、曲げたい部分だけを集中的に温めて型に沿わせます。例えば、パイプヒーターやヒートガンで板の特定の帯域を広めに加熱し、木型や金型に押し当てて曲げる方法です。これに対して全面加熱は、もっと大きな曲率や複雑な三次元曲面を作る際に有効で、板全体を加熱炉に入れて均一に軟化させ、取り出してから専用の曲げ型に載せて成形します。全面加熱は炉曲げとも呼ばれ、ムラなく加熱できるため厚みがある板や大寸法の部品でもきれいに曲げやすいのが利点です。

R曲げ加工の基本工程は、まず目的の形状に合わせた治具・曲げ型(モールド)を用意することから始まります。成形後に所定の寸法になるよう、加熱による収縮を見越して型寸法や板材サイズを設計します。加熱炉で適切な温度まで材料を軟化させたら、迅速に型にセットし、必要に応じて押さえ治具で圧力をかけながら冷却します。完全に冷めて硬化した後、製品周辺の余剰部分を切り落として仕上げ寸法にトリミングします(特に全面加熱の場合、冷却過程で全体的に収縮して寸法変化が起こるため、意図したサイズに合わせるには後加工が必要です)。この一連の工程では、温度と時間の精密な管理、および型への正確なセット技術が求められます。経験豊富な職人のノウハウが品質を左右する加工と言えるでしょう。

R曲げ加工のメリットは、前述の通り曲げ部に応力が集中しにくく高い強度と美観を両立できる点です。例えば同じ90度曲げでも、直線曲げでは内側が尖った折り目になりますが、R曲げで曲げRを付ければ厚み方向の応力緩和ができ、割れにくく耐久性のある形状になります。また、曲面全体を一体成形できるため部品点数や継ぎ目が減り、見た目も滑らかで清掃しやすい製品形状が得られます。デメリットとしては、専用の型や大型設備が必要になるケースが多く、初期費用や段取り時間がかかる点が挙げられます。特に全面加熱による大きなR曲げは、小さな直線曲げに比べて加工費用が高めですが、その分、仕上がり品質や実現できる形状の自由度が向上します。

なお、ポリカーボネート(PC)やPETなどの一部樹脂は非加熱での曲げも可能です。これらは耐衝撃性が高く粘り強い素材のため、プレスブレーキ(金属板の曲げに使う機械)で常温のまま曲げ加工する手法があります。加熱しない分、熱収縮による歪みやソリが発生しないメリットがありますが、加工できる形状に制約があり直線的な折り曲げに限られます。また、曲げた後に材料の弾性で角度が少し戻ってしまう(スプリングバック)ため、高精度な角度出しには不向きです。このような特殊な方法は限定的なケースですが、素材の特性によっては検討されることもあります。

少量試作での型なし曲げ加工はできるの?

ここまで解説した通り、R曲げ加工では専用の型を用いて成形するのが基本です。しかし、「試作品を1個だけ作りたい」「少量だけ曲げたいが高額な型費用は避けたい」といったニーズも現場ではよくあります。結論から言えば、少量・単発案件でも樹脂の曲げ加工は可能です。実際、プラスチック加工業者の多くは試作レベルの依頼にも対応しており、創意工夫で型費を抑える提案をしてくれることが多いです。

例えば、簡易的な治具や汎用工具を使って型を作らずに対応する方法があります。直線曲げであれば、角度ガイドとなる金属定規やL字アングルを用いて所定の角度で押さえ込むだけでも形状は出せます。大きなR曲げ形状でも、工夫次第では既製品の円筒やブロックを代用して曲げられる場合があります(例えば所定の半径に近い丸パイプに沿わせて曲げる等)。また、実績の多い業者であればよく出る寸法のR曲げ型を社内標準で保有しており、新規製作せずに流用できるケースもあります。この場合、標準型に合う形状であれば型費不要で対応可能なため、依頼前に一度相談してみる価値があります。

ただし注意点として、型なし・簡易治具での加工は量産品ほどの寸法精度や再現性は保証しづらい面があります。1個作るごとに職人の勘や手作業による調整が入ることも多く、同じものを多数作る場合にはバラつきが生じる可能性があります。そのため、最初は型を作らず試作し、量産段階で正式な型を起こすといった二段構えで進めるのも一つの方法です。いずれにせよ、少量案件で型費を抑えたい場合は柔軟に対応してくれる業者を選ぶことが大切です。後述しますが、当社(前川化学工業)でも試作・小ロットからご相談に応じておりますので、お気軽にお問い合わせください。

>>まずはお気軽にご相談ください

樹脂曲げ加工に適した材料と板厚のポイント

曲げ加工に使われるプラスチック材料は様々ですが、それぞれ特性の違いを理解して選定することが重要です。代表的な樹脂素材ごとに、曲げ加工との相性やメリット・デメリットをまとめます。また、板厚が加工性や仕上がりに与える影響についても触れておきます。

アクリル (PMMA) – 透明性が高く美しい仕上がり

ガラスのような透明度(光透過率約90%以上)を持ち、曲げ加工しても光沢のあるクリアな製品が得られるのがアクリルの特徴です。加工性も良好で、ヒーターで適切に加熱すれば比較的厚めの板(5mm程度まで)でも綺麗に曲げられます。展示ケースや照明カバーなど見た目重視の用途に広く使われています。

ただし熱収縮に伴う歪みや割れに注意が必要な素材でもあります。冷却時に内部応力が残りやすく、急冷や過度の曲げ角度によっては後からヒビが入ることがあります。厚板や複雑形状では加工難易度が上がるため、設計段階で無理のない曲げRを設定し、必要に応じて加工後にアニール処理(適温での保温による応力緩和)を行うことも検討されます。アクリルは表面硬度が高く傷が付きにくい利点もありますが、反面で衝撃にはやや弱い点も考慮してください。

ポリカーボネート (PC) – 耐衝撃・耐熱に優れるが高価

ポリカーボネートはプラスチック中でもトップクラスの強度と耐熱性(連続使用温度120℃前後)を持ち、曲げ加工した製品でも割れにくく頑丈に仕上がります。難燃性も有し、機械カバーや電気機器の筐体など安全性が重視される場面に適しています。材料コストは高めですが、必要寸法の板材を入手しやすいため無駄が少なく、トータルでのコストパフォーマンスは用途次第といえます。

加工上の注意点として、PCは吸湿性が高いため加熱時に内部の水分が気泡となって現れやすいことが挙げられます(いわゆる発泡や白濁の発生)。厚みのあるPC板を曲げる際は、事前に十分な予乾燥を行ったり温度管理をシビアにしたりする必要があります。また、PCは柔軟性があり常温でもある程度曲げられますが、曲げ戻り(弾性による変形戻り)が起きやすいため、正確な角度が要求される場合はやはり加熱+成形による加工が望ましいでしょう。

塩化ビニル (PVC、塩ビ) – 安価で加工しやすく汎用性が高い

塩ビは材料価格が安く、熱変形もしやすいことから曲げ加工に昔から多用されてきた素材です。硬質塩ビ板は電気絶縁性や耐薬品性にも優れ、実験装置のカバーや排気ダクト、看板など幅広い用途に使われています。低コストかつ加工限界も広いため、初めて樹脂曲げ加工品を作るような場合にも無難な選択肢となるでしょう。

難燃性も自己消火性があり比較的高いですが、欠点は耐熱温度が低い点です(PVCは60~70℃程度で軟化が始まります)。高温環境下に置かれる部品には向かず、また屋外で長期間直射日光に晒される用途では徐々に劣化(塩ビ特有の変色や硬化)が進む点に注意が必要です。板厚については薄板~中厚板まで対応しやすいですが、非常に厚い塩ビ板は内部まで均一に熱を通すのが難しく曲げ加工では敬遠されます(塩ビ自体の剛性もあまり高くないため厚板用途が少ないという事情もあります)。

PET・PETG – 透明で加工性良好、ただし用途限定

PET樹脂板(ポリエチレンテレフタレート)やその改良版PETGは、透明度が高く衝撃にも強いバランスの良い素材です。アクリルと比べると若干透明度は落ちますが、その分割れにくく真空成形などでも利用されます。曲げ加工においても、適度な粘りがあるため割れにくく加工しやすい素材です。加熱温度が比較的低くて済み、曲げやすい反面、熱変形温度も低めなので高温下で形状が狂いやすい点には注意が必要です(例えば温風が当たる環境で反りが出る等)。

ポリカーボネート同様に吸湿しやすいので、厚手の場合は事前乾燥すると気泡トラブルが減ります。なお、PETGはPETに比べて加工性が高く、曲げ加工や接着加工がしやすいよう改良された材料です。透明カバー類で衝撃や耐候性を少しでも上げたい場合、アクリルではなくPETGを選ぶという選択肢もあります。

ポリプロピレン(PP)・ポリエチレン(PE) – 曲げられるが保持力に難あり

いわゆるオレフィン系樹脂のPPやPEは、軽量で耐薬品性・耐水性が抜群に高い材料です。折りたたみコンテナや簡易タンクなどに使われることもあり、加熱すれば曲げ加工自体は可能です。ただし弾性が強く、型で成形しても冷却後に大きく元に戻ってしまう(曲げ形状を保持しにくい)という性質があります。

そのため、精密な曲げ形状を要求する製品にはあまり向いていません。どうしてもPP/PEで曲げ構造を作りたい場合は、ヒンジ構造(生け締め)を設けるか、加熱時にしっかり押さえ込んで冷却後もしばらく固定しておくなど、工夫が必要です。また、これらの素材は接着や塗装も困難で総じて二次加工が難しいため、曲げ以外の加工方法も含めて総合的に検討する必要があります。

【板厚と曲げ加工の関係】
板厚は曲げ加工の難易度や仕上がりに大きく影響します。一般的に薄い板ほど曲げやすく、ヒーターで短時間加熱するだけで素直に曲がります。厚い板では内部まで熱を通すのに時間がかかり、表面が過熱気味・内部は未加熱という状態になりやすいため、ムラなく軟化させる工夫が必要です。例えば厚さ10mmを超えるような板を曲げる場合、強力な加熱装置や長めの加熱時間が求められ、場合によってはオーブンで全体を温める方法が適します。

また、厚板では曲げRも大きめに取らないと割れの原因になります。目安として、直線曲げで折り曲げ可能なのは~10mm程度まで、それ以上はR曲げ(炉による全面加熱)が望ましいでしょう。実際、厚さ20~30mmクラスのアクリル板を滑らかに曲げる高度な事例もありますが、これには熟練した技術と専用設備が必要です。厚板の曲げ加工を依頼する際は、豊富な実績のある加工業者に相談し、可能な曲げ半径や注意点についてアドバイスを受けるようにしてください。

樹脂曲げ加工時の注意点 – 歪み・ひび割れなど失敗しないために

樹脂の曲げ加工では、材料特有のトラブルや品質低下に注意しなければなりません。ここではよくある失敗例とその原因、対策をまとめます。事前に理解しておくことで、加工不良を防ぎ高品質な製品づくりに役立ちます。

  1. 反り・歪みが出てしまう原因: 局所加熱による部分的な収縮が原因で、曲げた周辺の板にソリやねじれが発生します。特に薄い板や片側に大きな面積差がある形状で起こりやすい問題です。 対策: 必要最小限の加熱範囲に留めつつ、加熱ムラを無くすことが重要です。全面加熱できる場合は極力その方法を採り、難しい場合は両側から均等に熱を入れるなど工夫します。また、設計段階で曲げ方向や板取りを工夫し、反りが相殺されるよう対称形状にするのも有効です。曲げ後にプレス機などで矯正する方法もありますが、材料に応力が残るため極力避けた方が良いでしょう。

  2. ひび割れ(クラック)が生じる原因: アクリルに代表されるようにガラス的な樹脂は、急激な曲げや冷却で内部応力が高まると後から亀裂が入ることがあります。また、曲げた内側に過大な引張応力がかかった場合(曲げRが小さすぎる場合)にも割れの原因となります。 対策: 樹脂ごとの最小曲げ半径の目安を守り、無理な角度を付けないことが大切です。必要に応じて角を少し丸めるだけでも応力集中を緩和できます。加熱温度が不十分だと無理な力で曲げることになり危険なので、適切な温度まで十分軟化させてから曲げるようにしましょう。曲げ後、室温でしばらく安定させた後に低温加熱で応力抜き(アニール)を行うと、割れのリスク低減に有効です。

  3. 焦げ・変色や気泡の発生原因: 加熱しすぎによる表面の劣化や、樹脂内部の水分・揮発成分が熱で気化して発泡することが原因です。特にポリカーボネートは軟化温度と分解温度が近いため、温度管理を誤ると茶色く焦げたり白く濁ったりしやすい素材です。 対策: 使用する樹脂ごとの適正温度と加熱時間を守ることが第一です。ヒーターの設定温度を高くし過ぎると、一部が過熱状態になってしまいます。ゆっくり長めに加熱して全体を均一に温めるよう心がけましょう。また、吸湿しやすい材料は事前乾燥を行って内部の水分を飛ばしておくと、気泡トラブルを防げます。ヒーターには樹脂が直接触れることも多いので、焦げ付き防止のテフロンシートを挟むなどの工夫も有効です。

  4. 寸法が出ない(狙いのサイズにならない)原因: 熱による収縮変化や曲げ戻りを考慮していないため、出来上がり寸法が計画とずれてしまうケースです。特に全面加熱するR曲げでは、冷却時に思った以上に縮んで部品が小さくなることがあります。逆に部分加熱の直線曲げでは、曲げ角度が浅くなってしまう(戻ってしまう)こともあります。 対策: これは経験による見込みが物を言う部分ですが、試験曲げを行って収縮率を把握するのが確実です。重要寸法には加工余裕を設け、後工程で切削トリミングして仕上げる前提で板材を準備するのも一般的です。また、加工後すぐは寸法が安定しないこともあるため、特に精度が必要な部品は一晩程度おいて落ち着かせてから最終検査するのが望ましいでしょう。

  5. 特殊コーティング層のひび・剥離原因: ハードコートや鏡面処理が施された板を曲げると、表面のコーティング層が母材の伸縮に追随できず亀裂が入ったり剥離したりします。例えば、耐擦傷コート付きの透明板を曲げると、曲げ部に細かなひび(クラック)が生じてしまいます。 対策: 基本的にはコーティングされていない素材を使用するのが安全です。どうしてもコーティング板を曲げたい場合は、コート層を曲げ部分だけ削り落としてから加工し、曲げ後に再コーティングする方法も考えられます(手間は増えます)。また、印刷やシール貼付がある板も同様に、加熱で変色・剥がれの恐れがあるため注意しましょう。保護フィルム付き板の場合は、フィルムが熱で縮んで跡になることがあるため、曲げ部は事前にフィルムを剥がしておくと安心です。

以上の点を踏まえ、樹脂曲げ加工では「加熱しすぎず、しかし十分に」「無理な形を狙わず、しかし工夫して」というバランス感覚が重要になります。難しい材料や形状ほど専門知識と経験が物を言いますので、不安な場合は無理に自社内だけで完結させようとせず、実績ある加工会社に相談するのが結果的に近道になります。

樹脂曲げ加工のコスト・見積もりのポイント

樹脂板の曲げ加工を外部に依頼する際、コスト見積もりは気になるところです。費用は製品仕様や数量によって大きく変動しますが、ここでは主な要因と見積もり依頼時のポイントを解説します。

コストに影響する主な要因

材料の種類と板厚: 素材そのものの価格(例えばポリカーボネートはアクリルより高価など)と、板厚・板サイズが価格に直結します。厚い板や大判サイズほど材料費と加工難易度が上がるため割高になります。また、在庫にない特殊樹脂板だと取り寄せ費用が追加発生することもあります。 

曲げ形状の難易度: 曲げの箇所数(何カ所曲げるか)、曲げ角度やRの大きさ、精度要求なども工数に影響します。直線曲げ1カ所だけなら簡単ですが、複数箇所を連続して曲げる場合や、微妙な曲率のカーブを付ける場合などは試行錯誤に時間がかかるためコスト高になります。高度なR曲げで専用型を作る必要がある場合は、型製作費も考慮しなければなりません。 

数量(ロット数)と納期: 試作1個と量産100個では一個あたりのコスト構造が異なります。少量では段取りや治具製作のコストを製品単価に全て載せる形になりますが、量産であれば効率よく加工でき単価を抑えられます。納期が短く夜間対応などが必要な場合も割増料金となる可能性があります。 

後工程の有無: 曲げた後に穴あけ加工や接着、組み立て、研磨仕上げなどの二次加工が必要な場合、その分コストも追加となります。また、完成品の検査基準が厳しい(光学製品で傷NGなど)場合も手間が増えるため費用に反映されます。

見積もり依頼時のポイント

具体的な情報提供: 正確な見積もりには、できるだけ具体的な情報を伝えることが大切です。「板厚○mmのアクリル板をL字に直角曲げ1カ所、サイズ○×○mm、数量2個」など、形状・寸法・材質・数量の基本情報は詳細に伝えましょう。図面やスケッチがあればなお確実です。不明な点(例えば材質をアクリルにすべきかPCにすべきか迷っている等)は、相談しながら決めることも可能なので、その旨伝えて構いません。 

優先事項を明示: コスト重視なのか納期厳守なのか、あるいは品質最優先なのかといった要望の優先度を伝えておくと、業者側も提案がしやすくなります。例えば「試作用なので多少見た目は荒くても安価にお願いしたい」「展示用なので多少高くても透明度良く仕上げてほしい」等、求めるゴールを共有すると良いでしょう。 

複数社への相見積もり: 初めて依頼する場合や大きな案件では、複数の加工業者に見積もりを依頼して比較検討するのも一般的です。その際、各社に伝える条件を同じに揃えるのをお忘れなく。同じ情報でも業者ごとに設備や得意分野が異なり、コストのかけ方が変わるので、提示金額や提案内容を総合的に判断してください。安さだけでなく、技術的なアドバイスなどコミュニケーション面も重要な要素です。

将来の量産予定も伝える: 現段階では試作でも、ゆくゆく量産を見込んでいるならその旨を伝えておくと良いでしょう。将来を見据えた加工方法(例えば「試作段階は型無しで対応し、量産時に型を作ってコストダウンする」といった計画)を提案してくれる業者もあります。お互い長期的な協力関係を築く前提で相談することで、より親身な対応を期待できます。

以上を踏まえ、見積もり時には「素材・板厚」「形状と曲げ数」「数量」「その他要望」を整理して伝えるようにしましょう。信頼できる業者であれば、不明点はヒアリングしながら補ってくれますので、疑問点は率直に質問し、納得した上で発注することが大切です。

前川化学工業では、「技術と人で叶えるものづくり」というモットーのもと、常にお客様の課題解決を第一に考えています。樹脂曲げ加工について「この部材、曲げられるだろうか?」「コストや品質が心配…」というお悩みがありましたら、ぜひ一度当社までご相談ください。

>>まずはお気軽にご相談ください

前川化学工業に樹脂曲げ加工を依頼するメリット

最後に、当社前川化学工業株式会社にご依頼いただく場合の強みをご紹介します。当社は京都に本社を置き、創業60年以上の歴史を持つゴム・プラスチック製品の総合メーカーです。樹脂板の曲げ加工についても豊富な実績があり、試作の一品ものから量産品まで幅広く対応しております。

一貫対応と柔軟な生産体制

前川化学では、原材料の調達・選定から加工・成形・量産までワンストップで対応できる体制を整えています。樹脂の曲げ加工だけでなく、必要に応じて射出成形や切削加工、接着組立など他の工法も組み合わせ、ご要望の形状を実現します。少量多品種にも迅速に対応できる専用工場を保有し、お客様のニーズに合わせて柔軟に生産体制を組みます。

多様な材料調達ルート

エンジニアリングプラスチックやスーパーエンプラなど、特殊な樹脂素材についても約400社に及ぶサプライヤーネットワークからベストな材料を入手可能です。「この材料で曲げ加工できる業者が見つからない」といった場合でも、ぜひご相談ください。素材選定から一緒に検討し、最適なプランをご提案いたします。

高度な加工技術と品質管理

長年培ってきた独自の加工ノウハウに加え、最新鋭の設備群(樹脂用の大型加熱炉、NC加工機、3D加工対応機器など)を備えています。特に透明樹脂の曲げ加工では、光学特性を損なわない美しい仕上がりに定評があります。また、品質保証部門による徹底した検査体制で、常に安定した品質の製品をお届けします。

小ロットから大ロットまでOK

前川化学は試作一個から大ロット生産まで大歓迎です。専任担当者がお客様一人ひとりに付き、ヒアリングから納品まで責任を持って対応いたします。「まずは1個試してみたい」「継続量産も見据えて相談したい」といったケースでも、お気軽にお問い合わせください。お困りごとやアイデア段階でのご相談にも、技術スタッフと営業担当がチームでサポートいたします。

関西圏中心の充実したサポート

京都・大阪をはじめとする関西エリアのお客様には、自社便による柔軟な配送や納期対応が可能です。緊急の納品調整や細かな打ち合わせにも迅速に対応できる体制を整えています(※遠方のお客様へも宅配・運送にて対応しておりますので全国からご依頼いただけます)。

前川化学工業株式会社 樹脂加工サービスに関するご相談は、当社紹介ページ(会社案内ページ)よりお気軽にご連絡いただけます。樹脂曲げ加工のプロフェッショナルが、最適な素材選定から加工方法の提案まで丁寧に対応いたします。「試作・少量だから頼みにくい…」という場合でも、親身にサポートいたしますので安心してお任せください。貴社のものづくりのお役に立てることを、社員一同楽しみにしております。